そこには、君が
「……………う、そ…」
真っ赤な薔薇の花束を抱えた、
大和が立っている。
何が起きているかは分からない。
でも、何かが起きているのは理解した。
「ゆっくりお進みください」
扉を開けてくれた方が、
優しく教えてくれた。
慣れてきた目を何度も瞬きをするが、
これは夢ではないらしい。
歩きながら周りを見渡す。
ここはどうやらチャペルのようで、
サイドに木材のイスが置かれている。
隅っこにはオルガン。
奥は少し階段になっていて、
その上に大和が立っていた。
そこにいる大和が、
凛々しく胸を張っている。
「っえ…どういう、こと…」
私も一気に緊張して、
変なことを口にしながら前に向かう。
何を自分で言っているかも、
全く分からないまま。
「明香、来て」
「うん…」
すぐ側まで行くと、階段を登り、
大和と私は正面に立つ形で向かい合った。
「明香」
「…はい、」
まるでタキシードを身に纏っているようで、
結婚式をイメージさせる。
大和は言葉を続けた。
「俺はずっと明香だけを想ってる」
雰囲気にはもちろん、
勝ち誇ったような大和に負けた。
何を言われても、涙腺をくすぐる。
「例えどこにいても、それだけは絶対に変わらない」
「…ん、」
「ここまで一緒に居てくれて本当に感謝してる」
ありがとう。
そう言って軽く一礼する姿が、
何ともらしくなくて可愛い。
「この先、色んなことがあると思うけど」
この先というワードを聞いて、
頭の中にちゃんと描けた
大和との未来。
「絶対幸せにしてみせる」
きっとどんどん歳を重ねても、
変わらず今まで通りに笑っている。
「だから、一生一緒にいてください」
大和は手に持っていた花束を私に差し出した。
そしてそれを受け取ると、
膝を付いた大和が。
「愛して、ます」
照れくさそうにそう言って、
ポケットの中から四角い箱を取り出した。
手のひらサイズの、可愛い木箱だ。