そこには、君が
「じゃあ次は俺ね!」
京也は手に持っていたピザを頬張ると、
飲み物で流し込み、思い出話を始める。
「俺は4人で行った大阪旅行かな。2年の時、遊びに行ったよね!」
そうだ、確か2年生の春。
日帰りではあったものの、
京也の提案で大阪観光に行ったんだ。
本場のたこ焼き食べようとか言って、
結局お好み焼きしか食べられなくて、
泣く泣く帰る羽目になったんだよね。
「今だから言える話だけどさ、」
急に真面目な顔になり、
凛の顔を見て。
「あの頃からずっと凛のこと気になってました」
「え!そうなの…?」
突然、2人を包む空気感が、
何とも言えない甘さになる。
2年の春頃からなんて、
全く知らなかったんだけど。
「暴露はここまでにして、次は大和ね」
バトンタッチと、
京也は大和の肩を叩く。
指名された大和は逃げるつもりだったのか、
何も考えてなかったみたいで、
必死に頭を捻らせる。
「俺の3年間、別に真面目に過ごした訳でもなく、ただ喧嘩しかしてねえけど」
ふと顔を上げて言ったのは。
「お前らと毎日バカなことして遊んだ時間が、1番の宝だろうな」
大和の3年間には、
きっと色んな激動が含まれている。
先輩に突っかかられ、
同級生を助けるために喧嘩し、
後輩の挑戦に本気で向かっていった。
ずっと喧嘩をしては傷を作り、
そんな毎日を過ごしていた大和でも、
宝物が出来たんだ。
「凛には感謝してる」
「えっ、私!?」
自分の名前が出てくると思っていなかった凛は、
腹の底から驚いた低い声を出した。
何もしてないのに、と凛は不思議そうに大和を見る。
そんな凛に、大和は礼を述べた。