そこには、君が





夜明けが近付きながらも、


私たちは笑って過ごした。


卒業式が終わったら、


凛はすぐ県外へ引っ越しをするらしい。


結局良い就職先が見つかり、


まずは他県の店舗で修行をすることに。


といっても隣の県らしいが、


手続きや荷物の準備で、


しばらくはもう会えないと言っていた。


京也は実家を継ぐため、


お父さんが経営する会社に入社し、


いずれは社長になるらしい。


一旦は研修もあるため、実家を出るが、


それがまた運命的に凛の近くに行くそうだ。


2人で部屋を借りるというわけではないが、


きっとどちらかの家に居ることになるのだろう。


それから3時間ほど仮眠をとり、


私たちは最後の制服に腕を通した。






「本当に最後なんだね、制服着るのも」





「明日からコスプレになっちゃうんだな」






そんな他愛のない話をしながら、


学校へ向かう。


男2人は朝からコスプレの話で、


大盛り上がり。


これだから男ってやつは。





「あーおーげばーとーおーとしー」





卒業生が合唱する。


古い校舎で今、卒業式が執り行われた。


送辞に、答辞。


校長先生の言葉。


あれだけ集会で早く終われと思っていた


長い話も、今ではあっという間に感じる。


予定されていたよりも10分早い式は、


涙まみれで無事に終了。


その後はクラスで担任からの言葉をもらう。






「絶対生きろ。そしてもう一度、会いに来い!」





担任は久しぶりにこんなに手のかかる


3年生だったと、笑って言った。


私個人的には適当な担任だったけど、


その感じが好きだった。


何かと私に雑用させてきたけど、


それも良き思い出だ。






「写真撮ろう〜!」




「撮ろ!」




「私と撮ってください!」





3年生同士や、後輩も混じって、


色んな所で写真撮影をしている卒業生。







「まあそうなるよね」





「うん…。囲まれるのは予想済みだよね」





凛と2人で校門の前で佇む。


目の前には、大和や京也など、


賑やかな男子を囲む女子でいっぱいだ。






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