そこには、君が





「でも、これで凛ともしばらく会えなくなっちゃうよね」





何も考えず、


ただ言葉にした。


自分で言ったその言葉が、


急に胸を締め付けて。






「…あれ、」





「明香、やめてよ〜…」






気付けば涙になり、


凛もつられて泣いている。


校門の前で抱き合う私たち。


もう本当に最後なんだって、


嫌ほど感じてくる。






「メールするから!」





「私も。電話もするね?」






一生の別れを惜しむかのように、


私たちは泣きじゃくった。


会えない距離が遠いだけ。


私たちはそう言って、


お互いに手を握り合った。







「まだ夜があるだろ」





「本当だよ。泣くの早すぎ」







いつの間にか大和と京也がそばにいて、


呆れた顔で私たちを見ている。


そうだ、まだ夜がある。


私たちはこの後のクラス会には参加せず、


4人で最後にご飯を食べることにした。


クラスのみんなに別れを告げ、


そのまま予約したお店へ向かう。


凛の都合に合わせて、早めに解散予定。


それぞれが好きなものを食べ、


満足した時間を過ごした。






「あー!お腹いっぱい!」





「久々にこんな満腹まで食べたかも」






会計に行ってくれている大和と京也を店内に残し、


さっさと夜風に当たりに来た私たち。


お腹を摩りながら待つ間、


シンと静かになった時間の後。


凛が私を、真剣な目で見て言った。







「本当に明香に出会えて、最高の友だちが出来て、私の高校生活最高だったよ」





「凛、」






そんなの、私だって同じだ。


凛の存在にどれだけ助けられたかなんて、


数えることすら出来ない。







「ずっと友だちで、」





「当たり前でしょっ…」





私は凛の言葉を遮って、


力強く抱きしめた。


言わなくても思ってる。


繋がってるものは、


私たちにしか見えない。






「まーたこの光景だよ」





「懲りねえ奴ら」






会計が済んだ大和と京也が笑っている。


昼間と違うのは、2人も参戦して、


私たちを抱きしめてくれたこと。







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