そこには、君が

さん






「まだ準備してんのか」




「あー、もうちょっと!もう出来る!」




「それ、さっきも言ってたろ」






夜中に目が覚めてからなかなか寝れなくて、


朝になって少し目を覚ますのが億劫だった。


それでも何とか起こした体で、


荷造りしたカバンの中から、


デート用の洋服を準備した。


まさか今日一緒にいれるなんて想定外で、


しまっていた荷物を必死に漁る。


出来ることなら可愛く着飾りたい。


せっかくのデートだもん。






「準備できた」





「じゃあ行くか」





晴れ晴れとしたデート日和。


今日のプランは私が考える。


好きなところか。


寝る前からフル回転させて、


まずはどこから行くか悩んだ。







「どこ行く」





「今日は歩いて行ける場所巡りです」





色々考えたけど、


思い付く好きな場所は


全部大和がいる。






「この道って、」





「あ、気付いた?」






小学校の通学路。


そこは小学生が歩くには少し大人に


感じる雰囲気だった。






「蕾が付いてる」





「桜、もうすぐ咲くんだね」





歩道の端にずらりと並ぶ桜の木。


小学生の私たちには手が届かない場所に


あった蕾は、いつの間にか目の前にある。






「ここ、毎日歩いたよね」





「お前の荷物持ってやったな」





「いや逆ですよね」





この先で京也と待ち合わせして、


学校へ登校していた。


家からそこまでの間、


いつもジャンケンして負けた方が


荷物を持っていた。


無論、勝っても持たされたのは


言うまでもない。






「うわぁ、懐かしい」





「サッカーよくやってたな」






小学校のグラウンドでは、


体操服を着た小さな小学生たちが


体育だろうか、サッカーをしていた。


そんな光景を見ながら思い出す


幼少期の思い出が、


限りなく溢れてきた。






「じゃあ、次行こ」





私は柄にもなく手を出してみると、


大和は黙って私の手を取った。


次に向かったのは、


小学校から少し離れた場所にある中学校。


徒歩圏内にある中学校は、


現在改装中のようで、思い出の所々が


工事中のため、見えなくなっていた。




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