そこには、君が
「お待たせしました」
そう言って運ばれてきたのは、
当時と変わらないメニュー。
Aランチは唐揚げ盛り盛り。
Bランチはナポリタンとハンバーグ。
ちなみにCランチもあって、
それはオムライスのタコウインナーだ。
いつも京也と3人で頼んで分け合いっこをしていた。
「美味しい…!」
「更に美味くなったんじゃねえか」
期待値以上の出来栄えに、
来たことが間違いなかったと確信する。
大和は静かに唐揚げを2つもくれて、
だから私はハンバーグを半分あげた。
こんな日常も、しばらく出来ないと思うと、
何だかまた寂しくなってきた。
「次でラストの行きたいところね」
お腹がいっぱいになり、
少し重くなった体を必死に動かす。
けれど足取りは軽かった。
「どこ行く」
「着いたら分かる」
私たちが出会って、
私が好きな人が出来て、
私たちの全てを包み込んでくれていた場所。
「もしかして」
「はい、到着しました」
話しながらたどり着いた所は、
マンションから見えるあの公園。
私の寂しさを埋めてくれた、
思い出の大好きな場所だ。
「久々に来たな」
「だよね。ずっと来たかったの」
私は公園の中に入ると、
部屋から見える場所に立った。
「大和がずっといた場所」
「よく覚えてんな、立ってた所まで」
それは当然だ。
だって私が欠かさず見ていた場所だから。
あの部屋で、どんなに寂しくても、
ここには好きな人が立っていたんだから。
「サックス、また聴きたい」
「腕磨いとく」
大和に告白されたあの日。
全てを知った時には思い出せなかった
細かいことが、大和と過ごす中で
蘇った記憶がある。
中学生の頃、噂で聞いたことがある。
大和の好きなタイプはサックスを好きな女だって。
あの時は何を大人ぶってるんだ、と思っていた。