そこには、君が
「おはよう、明香」
「えっ、あ…おは、よ」
次の日の朝。
大和と京也と登校中。
後ろから凜に声をかけられ
上手く返せずしどろもどろ。
「どうしたの、明香」
「何かね、朝からこんな感じなんだよね」
凜が何か話しているけど、
そんなことなど耳に入らず。
「永森くん、どうしたの」
「何?」
「や、機嫌よろしくないのかと…」
「別に」
凜が必死に話しかける中、
なぜか大和の機嫌が悪いらしい。
そんな会話を横目に、
私の頭の中では一刻も早く、
凜に昨日の話を伝えたい。
早く2人に…なりたい。
そう思っていた時。
「明香」
大和が私を呼んだ。
「え、何」
「昨日の電話、あれ何」
いつもより低い声で、
私を問い詰めようとしている大和。
「昨日の電話…」
あ、あれか。
寝る前にはもう忘れていたことを、
起きた後に思い出すわけもなく。
「何って聞いてんだけど」
「別にあの…」
なんて言葉を返そうか。
ずっと悩んでいた時。
意味分かんねえ。
そう呟いて大和は1人で
歩いて行った。
なぜ怒る。
大和が怒る意味を、
私は知りたい。
「京也…」
「本当世話がかかる奴ら」
京也は呆れながらも、
私の肩にそっと触れ大和を追った。
「何で怒ってんの、永森くん」
「全く分かんない」
それよりさ、と。
大和のことなんてそっちのけで、
昨日の出来事を凜に報告。
「やばいよ明香、それは」
「見てること気付かれちゃったかな」
「可能性は高いよね」
2人でそんな話をしながら、
教室に入る。
私の頭の中に、昨日の出来事が
浮かび続け。
怒っていた大和のことなんて、
これっぽっちもなくなっていた。