そこには、君が
「棚橋さんたち、終わっていいよ!」
委員長にそう言われ、
2人でクラス特製のハッピを
脱いでバトンタッチ。
「2人とも終わり?」
「はい。午後から自由で」
「案内してよ」
「へ、」
思ってもみなかった展開に、
私はなぜか心を躍らせた。
気付かなかった。
この人に。
徹平さんに会ったことに、
ドキドキしていることを。
「行こ」
人込みを抜けるように
徹平さんは私の手を掴む。
「明香!」
隣の教室から聞こえた大和の声。
同時に引かれる、私の腕。
「お前…どこ行くんだよ」
「大和、」
徹平さんたちが来たことに
驚きすぎて、隣のクラスに
大和と京也がいることを忘れていた私。
「大和離してよ、もう」
右手は優しく徹平さんに。
左腕は強引に大和に引かれ。
一瞬で自分の周りの空気が固まった。
「誰か言えよ」
「関係ない」
もう何で徹平さんの前で
こんなことしなきゃいけないの。
なんて考えていると。
「うん、ごめん」
すると突然、徹平さんは。
おもむろに大和の手を離させると。
「今日は俺んだから」
もーらった。
意地悪い声で大和にそう言うと、
徹平さんは私の手を握り直して。
「来て」
笑いながらそう言って、
廊下をひたすら歩いた。
どこの店にも寄らず、
ただひたすら歩き続けた。