そこには、君が





「あの男の子」




周りでは勧誘の声で響く中。


徹平さんはぽつりと呟いた。






「必死だったね」





「あー…いつもあんなんで…」






変なとこ、見られた。


最悪だなんて思いながら、


顔を上げた時。






「彼氏?」





「えっ…」






思わず触れそうな距離まで


詰め寄ってくる徹平さん。


私は思わず、一歩後ろへ下がった。






「ちっ、違います!ただの幼馴染で…」






弁解じみた慌てぶりで、


大和を幼馴染だと伝えると。






「よかった」






聞き間違えるくらいの小さな声で。


目の前のこの人は安心した様子で、


私に笑いかけてきた。


その笑顔を見て、なんだろう。


すごく切なくなって、


胸が熱くなった。







「明香ちゃん」





「はい?」





名前を呼ばれると同時に。


文化祭を終える放送が流れた。


じっと見つめて、


徹平さんの口からやっと出た言葉。






「明日、空いてる?」




「…あし、た」




「時間作ってほしい。少しでいいから」






夕方駅前で待ってる。


少し切なそうな顔を見せて、


徹平さんは私を残して去って行った。






「明香~!いた」






肩をポンと叩かれ、


ふと我に返る。


そんな私を見た凜は。





「何でそんな顔してるの?」





不安そうに見つめてくる。






「え?」





「何か悩んでる顔してる」






何で私は悩んでる。


答えは出ているのに。


行くわけない。






「何でもないよ。教室戻ろ?」





「…?うん」






頭を思い切り振って、


今のことを無かったことにした。







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