そこには、君が






次の日。


私の頭の中には。


何も考えが浮かばなかった。




「永森くん、遊ぼーよ!」




「みんなカラオケにいるらしいし!」




マンションの階段を昇れば、


大和の家の前に2人の女の子。


クラスメイトだろうか。


短いスカートで可愛く着飾り、


髪を巻いた大和を好きであろう女子。





「後から京也くんも来るんでしょ?」




「じゃあ2人で!ねっ?」





可愛い語尾が耳に聞こえる。


だがそんなこと、


今の私には関係ない。





「めんどくせーから、帰れって」




「えー、やだ!一緒に行っ…、」




駄々をこねる彼女たちの間を。





「ちょっと失礼」





私は割って入った。


こんな女子なんて関係ない。


耳に入ってきたのは、


女子の文句と降り始めた雨の音。





「大和」




「明香、どうし…」




「一緒にいて」




大和の目を見て、そう言うと。


邪魔。


それだけ言って、彼女たちを


乱暴に外に出すと玄関のドアを閉め。


私を中へ、優しく迎え入れてくれた。





「どした」




「何でもない」




「飯作れ、腹減った」




こんなに寒いのに、


白いTシャツ1枚にスウェット。


大和は自分のお腹を掻きながら、


ふわぁ、っとあくびをこぼした。





「京也来るの?」




「後からな。知ってたのか」




「ううん、あの子たち言ってたじゃん」




なるほど、と言いたげな顔で、


私を見つめてくる。


何でこいつはこんなに、


悩みのない顔をしてんだよ。






「あの子たちいいの?」




「なにが」




「いや、やけに熱心に誘ってたから。断っちゃって、いいのかな…って」







< 43 / 325 >

この作品をシェア

pagetop