そこには、君が





大和に近付きながら、


申し訳なさそうにそう言うと。





「割り込んで来てよく言う」





急に私の腕を掴み、


キッチンへ連れていく大和。





「そう思うなら、美味い飯でも作れ。朝から何も食ってねーから」





勝手な奴。


そう口に出しそうになってやめた。





なんやかんや言ったって、


誘い続けてくれたあの子たちよりも、


急に来た私を選んでくれたんだもん。


持つべきものは、幼馴染だよね。


なんて都合のいいこと言ってみたり。





「あー食った」




腹いっぱい、と言いながら、


食器を重ねてくれる。





「美味しかった?」




「まあ、普通?」




「何それ、ムカつく」





食器を洗いながら、


会話が途切れた時。


浮かんでしまった。





"夕方駅前で待ってる。"




もうすぐ15時。


刻一刻と近付く夕方の時間。


私が今、1番迎えたくない時間。





「何の…話だったのかな、」





なぜか考えないようにしようと


すればするほど。


浮かんでしまう、徹平さんのこと。





「明香」




「…え、」





大和に名前を呼ばれ、


動揺したのか私の手から、


洗っている途中のお皿がシンクに落ちた。





「何やってんだよ、ばかっ…」





大和はすぐ近くの距離を、


慌てて駆けてきてくれる。


本当は行きたい。


行って、徹平さんと話して。


笑って過ごせる時間が欲しい。


だけど私が1人過ごした夜の時間を、


無駄にしたくなかった。






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