そこには、君が







「スケボーだ」





急げ。


私は自分の荷物を手にすると






「帰るから!」




トイレのドアを勢いよく叩き、


ばいばいも言わぬまま


自分の家に戻った。





「ココア…」





急いで用意したココアを手に


電気を消して、窓へ向かう。


何度聞いても、


足りない心地の良い音。


癒されてるなんて、


変な話なのかもしれない。


だけど私には、これが、


好きな瞬間だから。






「開けちゃえ」





特に顔が見えるとか、


そういうわけではない。


けれど何だか開けたくなった。


窓、という壁を、


取り払いたくなった。


静かに音も立てず、


そっと開けた窓という壁。


その向こうには、


小さく見えるスケボーを


している人。


あの人が、私に、


音をくれている。


そう思うと、それだけなのに、


その人がものすごく愛しくなった。





「危なっ…」





ヘルメットも付けないまま、


気持ちよさそうに滑り続ける。


私はそれがすごく羨ましくて。


顔が思わず緩んだ。


それから数分、


外を眺め続けていると。


突然スケボーの人が、


地面に転倒した。


私にはそれが瞬時に理解出来ず、


その場に固まってしまう。


眺め続けている限り、


その人が起き上がる様子はない。





「どうしよう…」





どうしたらいいか分からない。


急に行っても不審に思われる


だけだろうし。


かといって、このまま、


知らないふりも出来ない。


誰かに電話を…。


誰にかければいいのかも分からない。


1番最短の選択は、


自分が行くことだった。







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