そこには、君が
そしてその人は、
お腹を抱えて笑いながら、
静かに顔を上げた。
反射で顔を下げる。
やばい。
終わってしまう。
だってもう、
おしまい…。
「俺、生きてるよ」
そう言われて、
ハッとなった。
どこかで、
この声。
「悪ふざけが過ぎた。ごめん」
聞いた気がする。
どこだろ。誰だ。
確か。
…嘘だ。嘘だよ。
「顔、上げてよ」
「…嫌です、」
だって。
そんなこと、
あるわけないと思ってた。
今、顔を上げれば、
全部が現実になる。
「嘘だ…」
もう変えられない。
これは本当にあったこと。
だってこの声、
私が会いたかった人。
「明香ちゃん」
名前を呼ばれ、
思わず顔を上げると、
そこには見慣れた顔がある。
私はもう、
目を逸らすことが
出来なかった。
「徹平、さんだ…」
「なに、泣いてんの」
生きてることにホッとし過ぎて、
涙が止まらないまま、
彼を見たものだから。
変に心配された。
涙で視界がぼやける中、
必死に彼を探す。
「初めまして」
「初め…まして、」
そう。
まさに言うはずだった、
初めましての挨拶。
「ごめん、黙ってた」
「何で…」
緊張が解けて、
腰が抜けた。
へなへなと座り込む私を、
優しく見つめる徹平さん。