そこには、君が





快晴の空を鳥が羽ばたく。


軽快に弾む足音が、


より一層わくわくさせる。





「はい着きました」




「ここって…」





にぎわう家族の声が聞こえる。


中から、楽しいよ〜と、


手招きされている気になる。


着いた場所は。


私がずっと来たかった場所。






「ん?なに?」





「なんで…」





どうして私が


行きたい場所を知ってるの。


そう言おうと、


思わず徹平さんを見つめる。






「行こ」






手を引かれ、


テーマパークのチケット売り場へ。


人混みを掻き分けながら、


はぐれないように必死に歩く。






「わー!なにから乗ろう!」




「やけにはしゃぐな」




「私、こういう所、大好きなんです」





入り口でもらったパンフを


くまなく見る。


行きたい所が多すぎて、


今日1日じゃ足りないな。







「あ〜楽しい!」





園内1位と言われている乗り物を、


2回も乗れたことに満足な私。


だってフリーパスのおかげで、


並ばなくても優先で入れるから。






「もう1回くらいなら乗れますかね?」





そう言って隣を見ると。


思いがけなく、ぐったりしている


徹平さんがいた。






「え、て…徹平さん?」





「ん」





「あれ、どうし…」






そこで初めて気付いた。


まさかこの人。


絶叫系苦手な人…?






「ごめんなさい!」






ふらふらな彼を連れて、


休憩場所へ。


腰をかけながらうなだれる


徹平さんを見て焦りが生まれる。


こんなに楽しんでる私のために、


無理して色々付き合ってくれて。







「いや、嫌いではないから」




「でも…」




「とりあえず休憩させて」






何か助けを、と。


頭を働かせた結果、思いついたのは


飲み物を買うという選択肢。


待ってて、と伝え、


1人自販機へ。


その時。






「電話…?」





私の携帯が、


軽快に音を鳴らした。


何も予想してない奴からの。


大和からの着信。


しかも3回目。






「気付かなかった…」






この電話に出れば。


きっと大和は怒ってる。


行き先を知らない大和は、


きっと今イライラの真っ最中。


用件は何であれ、


面倒くさいやつなんだけど。





「もしもし…、」





気付いた以上、


出ないわけにはいかなくて。






< 70 / 325 >

この作品をシェア

pagetop