そこには、君が
「悪い明香。忘れてて」
「何それ。忘れててじゃないでしょ」
どうして私、
こんなに怒っているの。
無性にイライラするんだよ。
「その子と仲良くしてれば?」
気まずそうにする女の子に
一瞬だけ視線を送る。
申し訳なさそうな、
そんな表情に更に苛立つ。
私、なんか変だ。
そんなの分かってる。
だけど自分で抑えが効かなくて。
「凛、行こ」
「う、うん」
凛まで巻き込んで、
めちゃくちゃ気を遣わせて。
いけないってこと分かってるのに。
「明香、待てって」
私を制す手が伸び、
しっかり捕まれたそれを。
私は思い切り容赦なく払った。
「近寄らないで」
「まじ悪かったって」
「いいって別に」
空気がだんだん悪くなって。
重くなっていくのが手に取るように
分かっていく。
原因はまさしく自分。
「あの、棚橋さん…私!」
突然、女の子が、
声を震わせて言葉を発する。
そんな彼女に。
「聞きたくないです」
冷たく当たった。
名前も何組の子なのかも、
全く知らない女の子。
顔も見ず、話も聞くことなく。
私は3人に背を向け、
苛立ちを隠せないまま
その場を去った。
「いいの?明香」
「うん、いいの」
いいわけがない。
頭では分かってるのに。
何も考えないふりをして、
私は教室を出た。
結局どこへ行くこともなく、
そのまま帰宅。
家に帰った私は、
携帯の電源を切り、
ベットへと潜り込んだ。