そこには、君が
「もういいからっ…」
なにがいいの。
どこがいいの。
なんであなたが止めるの。
どうしてあなたが入ってくるの。
「大和、向こう行ってよ」
自分でも分かんないの。
何が自分を、そうさせているのか。
何でこんなイライラしてるのか。
きっとただの、
嫉妬に似た独占欲。
大和が私以外に話す人が、
凛だけだと思ってたから。
「分かった」
大和は私に背を向けると、
その女の子を、"ハルナ"と
呼んだ。
大和くん、に、ハルナ。
完全にどう見ても、
仲良しさんじゃない。
「また明日」
「うん、気をつけて」
放課後になり、
用事のある凛と別れ、
1人で帰路につく。
心の中のモヤモヤが、
思わず独り言になる。
「本当ムカつく」
跳んだらどこまでも
跳ねてしまいそうなくらい。
それくらい、
腹を立てている自分が、
心底不思議だ。
そこへ、
着信音が鳴った。
ディスプレイを見て、
無言で電話を耳に持っていく。
『明香?』
「…、」
『ねー、聞いてる?』
優しい京也の声が、
耳に届く。
それだけで何故だか、
心から水が溢れてしまう。
京也だって、
ハルナさんの一味なのに。
「…何も話したくない」
『なんか怒ってる?』
「別に。もうほっといて」
言いたいことは、
たくさんあるんだよ。
ハルナさんって誰?って。
何で知り合ったの?
2人とどういう関係?
聞きたいことは、
山ほどあるけど。
『ねーちゃんと話そ?俺、明香が…』
京也が電話の向こうで、
私に何かを言っている。
だけど、瞬間で、
京也の声が消された。
家まであと300メートル地点。