そこには、君が
「あーまた派手にやられたねー」
京也はハルナさんに手を差し出し、
汚れを払いながら言葉をかける。
私はその光景を、
ただ呆然と見つめるだけ。
そんな私に声をかける大和。
「明香、大丈夫か?」
「私は大丈夫だけど。この子が…」
大和は私が無事だと分かると、
ホッと一息ついた様子を見せる。
そして、ハルナさんの所へ
近寄ると。
「自分の口で言ってこい」
「で、でも…」
「明香と凛は、あいつらとは違う」
何故か私たちの名前が出てくる。
2人で顔を見合わせても、
話の筋が読めない。
「あ…!あ、あの!!」
ハルナさんは、
私と凛の前に立つと、
ガチガチに緊張した様子で、
話し始めた。
「初めまして、榛名 陽といいます」
彼女が名前を口に出した時。
私のくだらない嫉妬が、
一瞬にして吹っ飛んだ。
大和が呼んでいたのは、
上の名前だったのか。
「たっ、棚橋さんと…」
ごもごもしながらも、
なんとか口を動かす彼女を
まじまじと見つめる。
ふと思い出す瞬間。
あれ、この子…
どこかで。
「棚橋さんと河村さん…にっ、お願いがあります…」
「お願い?」
私と凛は顔を合わせながら、
何を言われるか内心おどおど。
人にお願いなんて、
なかなかされない。
「私と、とっ…友だちに…」
榛名さんはそこまで言って、
下を向いて固まってしまった。
どうしたどうした、と
不安になる私たちをよそに。
「下向いてんじゃねーよ」
大和はそっと榛名さんの前に立ち、
正面向かって言葉を浴びせる。
罵るわけでも非難するわけでもなく、
大和なりの優しい言葉で。
「何度も言うけど」
少し屈んで目線を合わせ。
「こいつらは他の奴とは違う」
諭すように言葉を紡ぐ。
それを言うと、チャイムが鳴り、
大和と京也はその場を去った。
残された榛名さんは、
ぎゅっと汚れたスカートを握り。