そこには、君が
「なに」
『どこ』
「どこでもいいでしょ」
大和からの電話は、
どうせ好き勝手言いたい時。
腹減ったとか。
買ってこいとか。
『早く帰ってこい』
「は?なに?命令?」
いつだって大和は。
人の迷惑を考えない。
『待ってるから』
ぶちっ。
言いたいことだけを言って、
勝手に電話を切る。
早く帰れなんて、
どうせまたご飯を作らされるんだ。
「ごめんね、陽。大和からだった」
「本当仲良いんだね」
ふと疑問が浮かんだ。
どうして陽は、
大和たちなんかと一緒にいたんだろう。
「大和くんと京也くんのこと、ずっと誤解してた」
何か伝わったのか。
陽は思い出すように遠くを見ながら、
話してくれた。
「怖い人だって、思ってた。だけど、ある日。私が教室で、いじめられてる所を通りかかった時にね。顔も名前も知らない私のことを、助けてくれたんだ」
別に褒めたいわけではない。
だけどあの2人は、
実は正義が全てだ。
「大和くんがよく話す、明香って子が、あの雨の日に助けてくれた明香だったのを知った時ね。私、感じたことないくらい嬉しかった」
「そんな大げさだよ」
「大げさじゃないよ!大和くん、いつも明香のこと話してて。私もいつか話せたらって思ってたんだ」
そんな風に言ってもらえることを、
本当に大和が話していたのか。
疑わしいけど。
「大和くん、いつも絆創膏持ち歩いてるんだね」
「ん?絆創膏?」
それを聞いて、
いつかの昼休みに見た、
陽の膝に大和が絆創膏を貼る光景。
「こんなこと言ったら、明香怒っちゃうかもしれないけど、」
本当に。
本当に。
「もし明香がこけたら、すぐ出してやれるようにって、いつも持ってるって言ってた」
大和って男は、
ばかでどうしようもない。