そこには、君が







「じゃあ帰っ…」




もう離れてやろうかと。


勝手に大和から手を離し、


カバンに手をかけた。





「明香」





そんな私を、


いとも簡単に


静止させる。







「なに、もう」





「待て」






裸のまま、


髪から雫が肌をつたう。


寒い季節なのに、


大和の体はぽっかぽか。






「寒いでしょ」





「かなりな」





「服着ようよ」






「今温まってる途中」






は。


なんだそりゃ。


本当にこの男は。







「眠い」





疲れたのかなんなのか、


一気に力が抜ける私。


あくびをひとつこぼすと、


私の手を引いて優しくそっと、


ふかふかのベッドに沈められた。






「じゃあ寝ろ」





「じゃあ大和は床ね」





「一緒に寝てくださいって言えや」





いかにも当然の如く、


私の隣に入ってくる。


どうぞと言わんばかりに、


腕枕まで添えて。






「陽と仲良くなった」





そう報告すると。


頼むわ、と目をつぶりながら


言った。






「陽に優しかったね」





なんて、


冗談交じりに言ってやると。






「お前よりよっぽど可愛いよ」





なんて言いながら、


私をぎゅっと抱きしめた。


訳の分からないこの男が、


たまらなく憎い。






「向こう行って」





「は、なんで」




「もーやだ、あっち行…っ」




「わーわーうるせえよ」




大和は自分の胸に、


私を押し当てて黙らせた。


息の出来ない私は、


必死にもがいて離れようとする。






「離してやんねえよ」





大和が笑う。


それだけなのに。


苦しめられているのに。


なぜか、


ほっとしている私がいた。






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