そこには、君が





徹平さんの交友関係は知らない。


どんな人たちが周りにいるのか、


全く分からない。


だけど徹平さんは、


私の推測によると人気者。


一緒にいても、たくさん


友だちとやらから電話がくる。


だから、きっとモテる。


みんなが徹平さんを、


好きに違いない。


ちくしょう。


こんな悲しい曲のせいで、


変なこと考えちゃってるじゃない。


布団の音がやけに響く。


まぶたの奥に、じんわり


涙が浮かんでいる気がする。


これから、


どうしていこう…


そう考えていた時。


ーーーーピンポーン、


チャイムが鳴った。






「…誰、」






もう髪もボサボサで、


人前に出られる格好じゃない。


出なければ諦めて帰ると


思った客人は、


もう1度チャイムを鳴らした。






「どちら様ですか?」






髪を少し整え、


玄関のドアを開ける。


こんな遅くに配達なわけないし。


大和たちだったら電話してくるだろうし。


全く心当たりのないまま、


外にいる人を確認した。


すると。そこには。







「…っ、明香…ちゃんっ、いた」





「て…徹平さん…」






息を切らし、


膝に手をついて項垂れる


徹平さんがいた。






「な、なんで…!」






「電話…おかしかっ…たから」





そんな小さなことなんかで、


飛んで来てくれたのか。


徹平さんを見つめて、


立ち尽くした私は。






「来て、くれた…」






思わず、一粒、


涙をこぼしてしまった。







「玄関でいいから、入れてくれる?」





「…はい」






変なこと考えすぎたせいで、


来てくれたことが何よりも


嬉しかった。


私のために走ってくれたことが、


この上なく幸せに感じた。


もう、昼間のことは流しておこう。


そうまで思えてしまうくらい、


やっぱり徹平さんが必要だ。






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