そこには、君が
「嫌なんて言わせないけど」
徹平さんは、私の唇に、
優しく自分を重ねた。
髪が少しかかるのが、
くすぐったい。
微かに香る徹平さんの香りは、
香水だろうか。
全身が徹平さんに包まれているような、
そんな気がした。
「…んんっ、」
何度も何度も重なる度に、
自分でも聞いたことのない
自分の声が漏れる。
それに恥ずかしくなって、
さらに体が熱くなる。
痺れるような心地の中、
お腹に冷たいものが触れた。
こっそり撫でる徹平さんの指が、
私を躍らせる。
「徹…平さんっ…」
「なに?ん?」
何もしてません、なんて
顔を見せる。
私の神経は、
徹平さんの指に集中している。
ゆっくり上がってくると、
また下に撫で下がるの繰り返し。
「やっ…だ、」
「嫌なんだ?」
私の想像では、
男の人に触れられるなんて、
気持ち悪いと思っていた。
周りの人が嬉しいと言うのが、
信じられなかった。
だけど、今の私に分かることは。
「嫌…じゃない、です」
徹平さんに触れられて、
こんなにも嬉しくて、
気持ちがいいなんて、
思ってしまっていること。
あんなにも怖いことだと思っていた
ものだったのに、この一瞬で、
徹平さんなら、なんて思った
自分がいる。
そんな時。
「ごめん明香ちゃん」
徹平さんは、そう言って謝ると、
私の上から横に身を変えた。
隣に来た徹平さんは、
自分の顔を腕で覆う。
「止まんなくなる所だった」
不覚にも笑ってしまった。
だって本当に、
いつなんどきも。
可愛すぎるから。
「昼間歩いてたのは、お客さん」
「お客さん?」
顔を覆いながら、
昼間のことを説明してくれる。
私は、未だに体が熱い。