そこには、君が
「店長の娘さんと、その友だち。店長は過保護、その反動で娘は男好き。旅行帰りの娘を、迎えに行けって言われて、春太と俺で行った所を、多分見かけたんだと思う」
そうだったんだ…と。
勝手に嫉妬した私も、
恥ずかしくなって顔を覆う。
よかった。
あの人が好き、とかじゃなくて。
よかった。
ちゃんと話してくれて。
「腕組まれて離せって言うのは簡単だったけど、そうすると店長に言われて、面倒くさくなるから放っておいた」
「そうだったんですか…」
「あと、言っておくけど」
徹平さんは体を横にして、
自分を肘で支える格好で
私を見下ろすと。
「モテるとか人気とか、俺にとっては明香ちゃんがいれば、関係ないから」
こんなことを、
平気で言う。
参りました、徹平さん。
私の、完敗。
「これからは、娘でも誰でも、触れられないように断るし。誤解とか、絶対させない」
「もう大丈夫です、本当。勝手に…なんか、ごめんなさい」
こうやって1つずつ、
何でも2人で話していけたら
いいな。
いつまでも。
「今度、同伴OKのクリスマスパーティがあるんだけど、行かない?」
「パーティ?大学の?」
「うん全体で。25日なんだけど。どう?」
そうだ。
もうすぐクリスマスか。
すっかり忘れてた。
「俺が明香ちゃんだけって、証明したい」
「でも行っていいのかな…」
「大丈夫。親連れてくる奴もいるし。春太も凛ちゃん誘うって言ってたから」
凛も行くなら、いいかな。
多分凛も今頃、
柴崎さんと修羅場かも。
「じゃあ…遠慮なく」
「楽しみにしてる」
小さな誤解から生まれた嫉妬は、
思いがけなくハッピーエンドで
幕を閉じた。