深夜1時のラブレター
はぁ……、と溜息が漏れる。
そのまま、床に座り込んでバッグを肩からおろすと、キッチンに走って行った彼がお茶をコップに入れて持って来てくれた。
脱いだ上着を受け取って、ハンガーにも掛けてくれる。
なるほど、実践躬行ってやつだ。
「年上を脅そうなんて良い度胸じゃない」
自慢じゃないけど、私は今まで男性との交流関係において、常に優位に立つ側だった(約1名を除いて)。
自分から告白したことなんてないし、振られたこともない。喧嘩して謝ったこともないし、ましてや脅されたことなんて1度もない。
それなのに、こんな年下の、10代の子供が、私を脅すなんて。
面白いって、単純にそう思った。
「分かった分かった、1ケ月だけだからね」
「やった!お姉さん、大好き!世界で1番大好き!」
ぱぁ……と、そんな効果音がするような笑顔で喜んだ男の子は、両手を大きく広げたと思いきや、私に抱き付いてきた。
やたらと手足が長くて、背が大きくて、満面の笑顔で、人懐っこくて、何かワンコみたい。
「調子いいなぁ、さっき自分で言った条件、忘れないでよ」
「うん!」
「約束破ったら、すぐに出て行って貰うからね」
「もちろん。お姉さんも自分が脅されてること、忘れないでよ」
「はいはい。それより、その"お姉さん"って止めてくれない?」