深夜1時のラブレター
「泣けるね!幼馴染との純愛」
「ですね、運命とか感じちゃいますもんね」
「あいちゃんにも、そんなピュアな心があったの」
「あ、酷っ!日野さんだって」
生放送が終わった後は、その日の感想や反省を番組スタッフと話し合うのが通例。
けれど、日野さんがいるとどうしてもこうやって恋バナになることが多くて、その話題となるのが、『想い人へのラブレター』というコーナーに寄せられた手紙の内容だ。
「それにしても!初めに会議で聞かされた時は、こんなに人気が出るコーナーになるとは思わなかったよ」
「日野さん、速攻で却下しましたもんね」
「あはは、したした」
「今時、誰がラジオにラブレターを送るんだって」
「そりゃそうだよ、このデジタルな時代だよ?わざわざラジオに投稿しなくても、自分でメール送ればいいじゃんって思うよ」
――――でも。
『いいじゃないか、こういう時代だからこそ、そういった古典的なやり方が面白いと思う人もいるだろ』
時枝ディレクターがそう言ってくれて、日野さんを含め番組スタッフたちを渋々ではあるけれど、頷かせてくれた。
会いたいけど、もう会えない。
今更だけど、伝えたい。
返事はいらないから、ただ受け取って欲しい。
もし、ラジオで聴いてくれていたら、私を思い出してくれるだけでいい。
独りよがりだけれど、愛のこもったメッセージを。
そんな気持ちを込めて始めたこの『想い人へのラブレター』は、地方紙で紹介して貰ったこともあって、今では当局の名物コーナーになりつつあるのだ。