深夜1時のラブレター


「お疲れさまです」

「あぁ、お疲れさん」



むかつくくらい、今日も良い男。

緩めたネクタイの間から、焼けた肌が覗いている。

テーブル席の1つを陣取って、お酒片手にタブレットを睨み付けている時枝ディレクターは、私の方にチラリと一瞬視線を向けただけで、素っ気なく答えた。

愛想笑いも出来ないのか……!



「ここに来ても仕事ですか」

「いや」

「じゃぁ、何を?」

「なぁ、あい。これとこれ、どっちが良いと思うか?」

「え?」



不意に差し出されたタブレットの画面には、某アニメのフィギュア。

はっきり言って、どちらも違いがよく分からないソレを彼は真剣な目で見つめては、何やらブツブツ呟いている。

心底イラついた私は、適当に指さした。



「こっちが良いと思いますよ」

「こっちかぁ……でも、俺はもうひとつの方が良いと思ったんだよなぁ」

「じゃぁ、そっちにすればいいじゃないですか」



あーあ、面倒くさい。

たかだかフィギュア1つ選ぶのと、可愛い部下が仕事を終えた後に会いに来たことと、この人の中ではどっちが大事なんだろう?

……なんて、比べてみなくても、すぐに分かる。

私にとって自分の恋愛マニュアルにハマらない男、"約1名"が、りゅうじさんなのだ。




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