深夜1時のラブレター


「ちょ、ちょっと待って、私も着替えるから」

「どうして?あいはそのままでいいじゃん」

「よくないよ。これ普段着だし、すっぴんだし!」



どこで誰に会うか分からないでしょ、そう続けると、ほまれはニコっと笑って私の頭を撫でた。



「あいはすっぴんでも充分可愛いよ。服装だって俺はそういうラフな方が好き!」

「……ほまれの好みは聞いてないよ」

「えー、デートの相手なのに?ね、もう本当にいいじゃん。早く行こうよ、時間が勿体ない」

「あ、もう!」



ほまれに急かされながら、せめてもと帽子と大きめのニットを手に持って家から出る。

コンビニだってこんな格好じゃ行かないからね、そんな文句を言いつつ、心は弾んでいた。

デートしよう!って誘われるのも、どこに行くか決めずの取りあえず家を出るのも、懐かしくてちょっぴり新鮮。

大人になると、どこそこのお店に行きたいとか、面白いイベントがあるからとか、何かしら目的が無いと出掛けたりしなくなるものだけど、こんなのも良いな。学生時代に戻ったみたいだ。



「あい、早く!」

「はいはい、ちょっと待って。郵便ボックスだけ見る」

「手紙?」

「うん、昨日、チェックしてなかったから」

「早くね」





< 30 / 109 >

この作品をシェア

pagetop