深夜1時のラブレター


「あいは気にしてないの?」

「してないしてない」

「……怖くない?」

「そりゃあ、多少は気持ち悪いって思うけど、大丈夫だよ」

「でも、」



不安げな瞳が、こちらに重なる。

さっきまであんなに嬉しそうにしていたのに、ほまれはシュンと肩を落として何か言いたそうに、それでいて何を言えば良いのか分からない顔をしていた。

本当に、可愛い子。

世の中に居る全ての人が、ほまれのようだったら、平和なのにな。そんなことをふと思った。



「ねぇ、そんなことより早くデートに行こうよ」

「あい」

「"時間が勿体ない"って言ったのは、誰だっけ?私、結構楽しみにしてるんだけど」

「……分かった。行こ!」



ラジオパーソナリティーの仕事は、やる気と根性だけでは、どうにもならないことがある。

限られた時間の枠から、自分の番組を勝ち取るのに、先輩も後輩も関係ない。

嫉妬したり、嫉妬されたり、何気ない言葉で相手を傷つけてしまったり、傷ついたり。

リスナーからお怒りのメールだって、一体いくつ貰ったか覚えてない。もしかしたら、恨みを買ってるかもしれない。

だけど、そんなことをいちいち気にしていたら、やってられない。

それこそ、気にして悩んでいる時間が勿体ないと思う。






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