深夜1時のラブレター


あいは、強いね。

手を繋いで歩き出したほまれは、ポツリとそんなことを言う。

ひんやり冷たい秋風に少し背中を丸くしながら、赤や黄色に染まった木々をゆっくり眺める。

こんな風に視線を上にあげてのんびり歩くのも久しぶりだなぁーと、小さく伸びをする。

目的が無いままダラダラと歩いて、何となく公園に足を踏み入れた。



「ねぇ、デートの定番と言えば?」

「定番?……うーん、とね」



ほまれは小さく唸りながら、公園の中にぐるりと見渡した。

それからすぐに、あっ!と、声をあげる。私の意図していることが分かったらしい彼は、顔を綻ばせた。



「ボートがある!」

「まさに、定番でしょ?」

「うん!あい、乗ろうよ」

「いいよ、漕いでくれるならね」

「えー、一緒に漕ごうよ」



ほまれは、”一緒"という言葉をよく使う。

何かをしようとすると、すぐに自分も一緒にしたいと言うし、逆に、先に済ませてしまったら、一緒にしたかったのに、と拗ねる。

単に甘えたなのか、それとも、共有意識が強いのか。

そんな風に思っていたけど、そこにはちゃんとした意味があったんだよね。

ボートのオールを漕ぐのは、見ているよりもずっと難しくて。

同じようなところをクルクル回ってしまい、ふたりでお腹がよじれるほど笑った。






< 33 / 109 >

この作品をシェア

pagetop