深夜1時のラブレター
すっかり泣き止んだ女の子は、嬉しそうな声をあげて持っていたフィギュアを、ほまれに見せている。
……これ、どこかで見たことがあるような。
そう思った時だった。
「沙良!」
男性の大きな声に、女の子の動きがぴたっと止まる。
それから、パパ!と叫んだ彼女は、ほまれと私の間をすり抜けるようにして、男性の元へ走って行った。
「あ、良かった。お父さん見つかったんだ」
微笑ましい父娘の再会を目にして、ほまれはニッコリと笑う。
けれど、私は正直言って心穏やかではいられなかった。沙良ちゃんを抱き上げた男性は、私の姿を認めた瞬間、少し驚いた表情を見せた。
胸がズキンと、痛む。
最悪、不運にもほどがある。
よりによって、りゅうじさんの子供だなんて。
「……柊木?」
「こんにちは」
「偶然だな。沙良を保護してくれたのか?ありがとう」
「いえ、相手をしていたのは、彼の方ですよ」
ほまれの方で手で示すと、りゅうじさんは軽く微笑んで会釈をした。職場では一切見せない、父親の顔。
ブルーのネルシャツにジーンズといったカジュアルな服装で、仕事人間のオーラはゼロ。これがあの、時枝隆司かと、確認したくなるくらい別人だ。
「世話になったね。ありがとう」
「そんな、お礼を言われるほどのことはしてないですよ」
ニッコリと笑いながらりゅうじさんと会話をするほまれは、この人誰?と、目で聞いてくる。
だけど、私はふたりを紹介する余裕なんて少しもなく、ただただ、この場から消え去りたいと願うばかりだった。