深夜1時のラブレター
* * *
「あいの好きな人って、あの人なんだね」
コーヒーカップを両手で挟んで、湯気をふぅーと吹いていたほまれは、不意に呟いた。
私はというと、否定する気力もなく、足元にあったクッションをお腹に引き寄せる。
あの後、デートを続けたものの、すっかり白けた雰囲気になってしまい、早々に切り上げて家に帰って来たのだ。
あれだけ楽しそうにしていたほまれには悪いけど、私のテンションは地の底まで落ちている。
「言っとくけど、不倫とかじゃないからね」
「そうなの?」
「奥さんは私と知り合うずっと前に亡くなってる。今はりゅうじさんが1人で娘さんを育ててるって」
「そっか、大変だね」
そう……、大変。
りゅうじさんの頭の中は、仕事のことと娘さんのことで、9割ほどが埋まっている。彼が時々、シャワーを浴びると言って家に帰るのは、娘さんに会いに行く時なんだ。
まだ小さくて、でも小さいなりに頑張り屋さんで、聞き分けの良い子なんだと、彼は酔った時に話してくれたっけな。
私はその時、とてつもなく切ない気持ちになった。
「知ってたんだけどね」
子供がいるって知ってて、好きになったはずなのに。
理解のある彼女になろうなんて、思いあがっていたくせに。
彼の中の残りの1割、僅かにある"男"の部分で、良いように扱われるのが、切なくて仕方ない。