深夜1時のラブレター
はぁ……と、深い溜息を落とした杏子は、物憂げな表情を浮かべてティーカップに口を付ける。
純和風の美人で社交的な彼女は、次から次へと彼氏を作るが、如何せん見る目がないため長続きしない。
というより、母性本能が強く世話焼きな彼女と付き合うと、大抵の男が赤ちゃん返りをしてしまうのだと思う。
ダメンズウォーカーならぬ、ダメンズメーカー。
こんなこと、口が裂けても言えないけど。
「悪いんだけど、あいの家にしばらく泊めてくれない?」
「え?」
「ほら、私、同棲してたじゃない?多分、まだ家に居ると思うんだよね。あいつが出て行くまでで良いから」
「あー……」
泊めてあげたいのは、やまやまだけど。
どうしよう?私の家には今、ほまれが居ること、杏子には言ってないんだよね。
別に隠すことじゃないけど、報告するほどのことでもないし、と思ってそのままだったのを、このタイミングで言う?
しばし、考えあぐねていると、杏子がニヤっと笑った。
「何よ、私が居たら邪魔ってこと?もしかして、」
「え、いや、」
「ふふふ、そうよね、あいの家には時枝さんが来るもんね」
あ、そっち?
りゅうじさんが家に来ることなんてまず無いのだけど、杏子がそう解釈してくれているなら、わざわざ訂正する必要もない、か。