深夜1時のラブレター
信じられない、信じられない。
朝の7時の番組といえば、当局では花形の時間枠の1つ。
普通なら中堅~ベテランのパーソナリティーが担当するところなのに、まさか2年目の自分にこんなチャンスが舞い降りてくるとは!
「時枝ディレクターが、あいちゃんを推したんだって」
「え?」
「今担当してる雅哉さんが、生放送がキツイって言うようになって。上層部は何とか説得していたみたいなんだけどね」
「雅哉さん、具合悪いんですか?」
雅哉さんというのは、この道25年の大ベテランで、私も中高生の頃によく番組を聴いていた人気のパーソナリティーだ。
確か、この春から体調を崩しているというのを聞いていたけれど。
「うん、あんまりよくないみたい。収録放送なら体調をみながらやれるけど、生放送は何があるか分からないしね」
「ですね……」
「でね、時枝ディレクターが、代わりのパーソナリティーにあいちゃんを推薦したんだって。あの人、本当にあいちゃんのことをよく見てるよね。雅哉さんもあいちゃんなら任せられるって言ってたらしいよ」
そう、だったんだ。
何かこんな時にチャンスが回ってきたなんて喜ぶのは、不謹慎なような気もするけど。だけど。
「ちょっとー、何暗い顔してんのー?ここは喜ぶところだからね?"私に任せてください"って胸張って言うところじゃん!」
日野さんが、私の背中をバシっと叩く。
今度は手加減なしの思いっきり痛いやつだったけど、そのお陰で気合が入った。
うん、チャンスはチャンスだ。