深夜1時のラブレター


* * *



「おはようございます」

「おはようー……、もう夕方だけどね」



オフィスのエントランスをくぐりながら、知った顔と挨拶を交わす。

朝でも昼でも夜中であっても、掛ける言葉は「おはようございます」。この挨拶の仕方は飲食店のようで初めこそ違和感があったが、今ではだいぶ慣れた。

受付を通り抜けてエレベーターホールに向かう途中、あいちゃーん!と私の名前を呼ぶ声が聞こえ後ろを振り向く。

同僚の日野(ヒノ)さんだ。



「日野さん、顔が死んでますよ」

「そりゃ徹夜明けだよ?死んだようにもなるって。あいちゃんもあと10ほど歳取ったらこうなるからね、あはははは」

「肝に銘じまーす」



ここで働く人たちは、不規則な勤務時間のせいでハイテンションかローテンションのどちらかである。

日野さんは前者でいることが多く、バナナをいつも手に持っている。鎮静効果があるとか、ないとか。

こざっぱりと短く刈り上げた髪に指を入れて寝癖を直した彼は、急に思い出したかのように手を叩いた。



「それはそーと!あいちゃんの例のコーナー、反響出てきたね」

「本当ですか?」

「マジマジ、メールがじゃんじゃか届いているよ」

「やったぁ」

「ディレクターも褒めてたよ」





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