深夜1時のラブレター
私は、彼のことを何も知らなかった。
何も知らないと思い込んでいた。
一緒に過ごしたほんの僅かな時間でも、気が付くことがたくさんあったはずなのに、どうしてちゃんと見てあげなかったのだろう?
ごめんね、ほまれ。
すきだよ、ほまれ。
約束の時間は、刻一刻と迫っていたね。
「えー!あい、帰ってくるの遅いの?」
今日は絶対早起きしようと思っていたのに、ついつい「あと5分」という誘惑に負け寝過ごしてしまった。
後悔とともに大慌てで出掛ける準備をする私の後を、ほまれがずっと付いてくる。
その仕草はまさにワンコのようで可愛いけど、今は構ってあげる時間が無い。
ええーっと。この前買ったスカート、どこだっけな。
「うん、仕事の後にね、ライブを観に行く予定なの」
「なんだよー。俺、今日バイト早く終わるから、晩御飯作ってあげようと思ってたのに」
「ごめんね」
あった、あった。
このスカートなら、トップスはこっち。靴は……、待てよ。今日のライブは絶対激しいから、ヒールなんて履いて行ったら足が痛くなっちゃう。パンツスタイルに変えよう。
「別にいいけど……、何かあい、嬉しそうだね。誰のライブ行くの?」
「TRUE BLUE」
着替えるんだから、あっち行っててよね。
そんな意味も込めてくるりと後ろを振り返ると、ほまれは両目を見開いて私の腕を掴んだ。