深夜1時のラブレター
「TRUE BLUE?まじ?チケット取れたの?」
「ううん、招待して貰ったの。取材の前にどうぞーって」
「うわーずるい!俺も行きたい!」
「チケットの数に余裕ないから無理だよ」
「くそー!ずるいー!ラジオパーソナリティーずるいー!」
そんなことを言っても仕方ないでしょ?
これも仕事の一環なんだよ?
膨れっ面をするほまれの頬っぺたをぎゅっと抓る。
子供みたいに拗ねて唇を尖らせた彼は、何でも良いからツアーグッツを買ってきて、と、可愛いおねだりをした。
「サイン貰ってきてあげるから、良い子で待ってて」
努めて"仕事"ということを、強調する。
とはいえ、実はほまれに言われた通り、浮足立っている。
ただいま全国ツアー中の人気ロックバンド『TRUE BLUE』のライブチケットは、ファンクラブに属していてもなかなか手に入らないレアもので、社内ではたった2枚のチケットを巡って、争奪戦になったくらいだ。
そして見事、インタビュアーの権利を勝ち取ったんだもん。
ウキウキしちゃうのは、しょうがないよね。
「行ってきまーす」
「あ、あいちょっと待って。これ」
「ん?」
「また入ってたよ、郵便ボックスに」
また?よっぽど暇なんだね。
例の嫌がらせの紙をほまれから受け取った私は、その中身を見ることなくゴミ箱の中に投げ捨てた。