深夜1時のラブレター
目を大きく見開いた日野さんが拾いあげた紙をこちらに見せてくるものの、疲れ切った私はぼんやりしていて。
ちょっと、ここ!ちゃんと見て!という彼の声で、やっと状況が飲み込めた。
彼の拾った紙というのは、先週私が代理で担当した番組の原稿だった。
「これ、あいちゃんの字じゃないよね?」
「違います。これは……杏子です」
「杏子ちゃん?もしかして、水曜日は杏子ちゃんが入る予定だった?」
「ええ、そうです。でも直前になって代わって欲しいと言われて。原稿の手直しは出来てるからって、私はそのまま……」
「ねぇ、これ、わざとなんじゃない?」
わざと?まさか……?
瞬時に笑って返そうとしたけど、不意に頭の中である繋がりを見つけた。それは、
ストーカーという存在を、刷り込ませるような発言。
郵便ボックスに入れられた嫌がらせの手紙。
鞄から転がり落ちた、赤いマジックペン。
私がオンエアで伝えたライブの日時は、原稿に書き込まれた訂正文そのままで、言い間違えてなんか無かった。
「いや、でも……わざとこんなことをする理由って」
「そんなの決まってるじゃん!」
「え?」
「あいちゃんの出世を妨害したかったんだって。現にそうなったでしょ?……ここだけの話。杏子ちゃんは、あいちゃんを妬んでいたんだよ」