深夜1時のラブレター
杏子が、私を妬んでいた?
……そりゃ、同期でライバル関係だったけど、仕事の枠を超えて良い友人関係でもあったし、サバサバした性格の彼女がこんな卑劣なことをするとは、思えない。
きっと日野さんの考えすぎで、私も気にしすぎなんだ。
でも―――。
「どうした?まだ落ち込んでいるのか?」
ロックグラスの中で、氷がコトリと音を立てて回る。
隣のカウンター席に座るりゅうじさんは、煙草を口に咥え火を付けた。そのタイミングを見計らったようにバーテンダーが灰皿を目の前に置いてくれる。
ここはいつもよく行く店ではなく、たまに利用するBARで静かに飲めるのが気に入っているらしい。私を連れて来てくれたのは、今回が初めてだ。
「いえ。でも本当にすみませんでした、ご迷惑を掛けて」
「迷惑とは思ってない」
「でも、せっかく推薦して下さったのに」
りゅうじさんは少し目を丸くする。
そこで、日野さんから聞きましたと言うと、彼は返事をする代わりに煙草の煙を一気に吐き出した。
「心配するな、お前はどんと構えておけ」
「りゅうじさん……?」
「俺がお前をうちのナンバー1にしてやるから。お前はそのつもりで自分のことだけ考えとけ」