深夜1時のラブレター



こういう時に、ずるい人。

叱ることなく、かといってフォローするわけでもなく。

隠し持ったテリトリーに誘い込んで、お酒を飲ませて。

優しい言葉なんて1つもくれなければ、変に励ましたりもしない。

そのくせ、



「うちのナンバー1って、キャバクラみたいな言い方ですね」

「そうか?」

「私になれますか?」

「俺の中では、すでにナンバー1だ」

「(……殺し文句ですよ、それ)」



仕事とプライベートは、きっちり分けた方がいいと、誰かが言っていたけれど。あれは本当にその通りだと思う。

職場の、ましてや上司に恋なんてしてしまえば、もう何もかもがぐちゃぐちゃで。

優秀な部下として褒められたのか、それとも大切な恋人として守って貰っているのか、分からなくなる。

でもね。

思い入れのあるこのBARに、私を誘ってくれたこと。

少しは、期待してもいいの?



「今日は送ってやるから、気が済むまで飲んでいいぞ」

「……ほどほどにしておきます」

「可愛くないやつだな」

「早く帰らないと、番犬がうるさいの」

「番犬?あぁ……、あいつか」



りゅうじさんは、面白くなさそうな顔をして、また煙草に火を付けた。





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