深夜1時のラブレター
* * *
「大丈夫か?」
「程よく吐きそうですけど、何とか」
私たちの会話を聞いて、タクシーの運転手が露骨に嫌そうな顔をした。
それから吐く時は車外に顔を出せという意味なのか、窓を大きく開けてくれる。いや、単に私たちがお酒臭かったせいかな?流れ込む風が冷たくて心地良い。
「ったく、誘うくらいの度胸があるなら、潰れない程度にしろ」
「すみません」
「いや……俺も悪かった」
「りゅうじさん?」
ふわり、頭を撫ぜられる。
そのまま抱き寄せられて、彼の肩に顔を埋めるような形になり、私はゆっくり目を閉じた。
りゅうじさんの匂いがする。
安心する彼の匂い。
……の、はずなのに、何かが違うような気がして目を開けた。
これじゃない、私が安心する匂いは、これじゃない、ような?
そんなことを思って首を傾げている時だった。
「おい、何だあれは?喧嘩か?」
りゅうじさんの声に顔をあげると、うちのマンションの前で人と人が揉み合っているのが見えた。
暗くてよく分からないけど、あの背の高さからいうと……。
「ほまれ!」
揉み合っている片方は、ほまれだった。
誰かと喧嘩をするような子じゃないのに、一体何があったのだろう?と、私は慌ててタクシーから飛び降りた。