深夜1時のラブレター
私たちは、しばし言葉を失った。
信じがたいその光景の中で、沈黙だけが辺りを埋めていく。
どうして?彼が?
嘘でしょ?嘘だと言って。
目的は何?
疑問符ばかりが浮かぶ私は、きっと青ざめていたと思う。
やたら穏やかに微笑む彼が、印象的な夜だった。
やがて遠くからサイレンの音が聞こえ、私たちのすぐ近くで止まった。
「これを被っておけ」
深く濃くなる夜の街中で、沈黙に包まれていたのは、どうやら私たちだけだったらしい。
気が付くと、誰かが呼んだと思われるパトカーに日野さんが、救急車にほまれが乗せられていく。
やじ馬も多数集まる中、りゅうじさんは私の頭にマフラーを被せ顔を隠すように言い、それから背中をさすってくれた。
「あいもそいつと一緒に救急車に乗るんだ」
「りゅうじさんは?」
「俺は警察に行って事情を説明するから」
「日野さんは……」
「お前が心配することは何もない。後で連絡するから、まずは病院に」
顎を引いて、じゃぁ行ってきます、そう言おうとするけど、唇と膝がガクガク震えて言葉にならない。
早く救急車に乗って、ほまれのところに行きたいのに、どうして足が動かないの――――と。