深夜1時のラブレター



私たちは、しばし言葉を失った。

信じがたいその光景の中で、沈黙だけが辺りを埋めていく。

どうして?彼が?

嘘でしょ?嘘だと言って。

目的は何?

疑問符ばかりが浮かぶ私は、きっと青ざめていたと思う。

やたら穏やかに微笑む彼が、印象的な夜だった。

やがて遠くからサイレンの音が聞こえ、私たちのすぐ近くで止まった。



「これを被っておけ」



深く濃くなる夜の街中で、沈黙に包まれていたのは、どうやら私たちだけだったらしい。

気が付くと、誰かが呼んだと思われるパトカーに日野さんが、救急車にほまれが乗せられていく。

やじ馬も多数集まる中、りゅうじさんは私の頭にマフラーを被せ顔を隠すように言い、それから背中をさすってくれた。



「あいもそいつと一緒に救急車に乗るんだ」

「りゅうじさんは?」

「俺は警察に行って事情を説明するから」

「日野さんは……」

「お前が心配することは何もない。後で連絡するから、まずは病院に」



顎を引いて、じゃぁ行ってきます、そう言おうとするけど、唇と膝がガクガク震えて言葉にならない。

早く救急車に乗って、ほまれのところに行きたいのに、どうして足が動かないの――――と。






< 67 / 109 >

この作品をシェア

pagetop