深夜1時のラブレター



何を急に言い出すんだ?

そんな心の声が顔に出ていたのかもしれない。

目が合ったほまれは、にこっと笑って体勢を横向きに変えた。

怪我をしていない方の腕を枕にして、私の顔を覗き込む。



「救急車に乗る前に、あの人があいを抱きしめていたのを見て、分かったよ」

「あ、あれに深い意味は無いんだよ」



あの時、ほまれは先に救急車に乗っていたから知らないと思っていたけど、見てたんだ。

でも、あれは気が動転している私を、落ち着かせようとしてくれただけで……。



「深い意味がないのに、部下を抱きしめたりする人なの?そんな風には見えなかった」

「じゃぁ、どう見えたの?」

「あいをすごく愛しているように見えた」



そんなの……、そんなわけないじゃない。

いや、もしそうだとしても、今、私が好きなのは――。



「あいは何も心配いらないよ。仕事も恋愛もきっとうまくいくよ。ストーカーも片付いたしね」

「何か……止めてよ、そんなお別れみたいな言い方」

「お別れだよ」



ほまれはそう言って、私の髪を指で優しく梳いた。

ひんやりと冷たい手がオデコに触れて、火照っていた熱がゆっくりと引いていく。

言葉を無くした私に、彼はニコッと笑って。



「だって、1か月の約束でしょ?」



ごめんね、あい。

俺の我がままに付き合ってくれて、ありがとう。

幸せになって。



ほまれは、確かそんなことを言っていたような気がするけど。

確かめる術は、もうどこにも無かった。




< 77 / 109 >

この作品をシェア

pagetop