深夜1時のラブレター
何を急に言い出すんだ?
そんな心の声が顔に出ていたのかもしれない。
目が合ったほまれは、にこっと笑って体勢を横向きに変えた。
怪我をしていない方の腕を枕にして、私の顔を覗き込む。
「救急車に乗る前に、あの人があいを抱きしめていたのを見て、分かったよ」
「あ、あれに深い意味は無いんだよ」
あの時、ほまれは先に救急車に乗っていたから知らないと思っていたけど、見てたんだ。
でも、あれは気が動転している私を、落ち着かせようとしてくれただけで……。
「深い意味がないのに、部下を抱きしめたりする人なの?そんな風には見えなかった」
「じゃぁ、どう見えたの?」
「あいをすごく愛しているように見えた」
そんなの……、そんなわけないじゃない。
いや、もしそうだとしても、今、私が好きなのは――。
「あいは何も心配いらないよ。仕事も恋愛もきっとうまくいくよ。ストーカーも片付いたしね」
「何か……止めてよ、そんなお別れみたいな言い方」
「お別れだよ」
ほまれはそう言って、私の髪を指で優しく梳いた。
ひんやりと冷たい手がオデコに触れて、火照っていた熱がゆっくりと引いていく。
言葉を無くした私に、彼はニコッと笑って。
「だって、1か月の約束でしょ?」
ごめんね、あい。
俺の我がままに付き合ってくれて、ありがとう。
幸せになって。
ほまれは、確かそんなことを言っていたような気がするけど。
確かめる術は、もうどこにも無かった。