深夜1時のラブレター
今度、試しにバラしてやろうか。
上昇していくエレベーターの中で、そんなことをぼんやり考える。
123……9、と点滅していくボタンを何となしに見つめながら、14という数字に着いたところで、ドアがゆっくりと開いた。
「じゃぁね、あいちゃん」
「はーい」
日野さんとはそこで別れて、私は自分のデスクがあるフロアに向かう。
その途中にあるドリンクバーでブラックコーヒーを調達して、未だ微かに残っている頭痛を追い出そうと一気に飲み干した。
二日酔いで頭が痛いです、とか、体が怠いです、なんて、そんなの自慢にも言い訳にもならない社会人2年目。例え高熱が出ていたとしても、それを自ら人に言うことはない。
幸い顔の酷さは仕事に影響が出ることはなく、商売道具である声帯は丈夫に出来ているので、深酒した次の日でも声は枯れない。
それでも念のために、と、鞄の中からのど飴を1つ取り出して、口の中に放り込んだ。
自己管理の大切さは、新人の頃に時枝ディレクターから叩き込まれている。
「おはようございます」
ぱっと見たところ、フロアの中は誰もいなかった。
それでもいつもの癖で挨拶をしながら自分のデスクに向かっていると、ひょっこりと奥の部屋から顔を出した杏子(キョウコ)が、私の顔を見るなり、申し訳なさそうに両手を合わせた。