深夜1時のラブレター



もし、日野さんが、パーソナリティーだったら。

どんなラジオ番組を作っただろう?

きっと愉快で、和気あいあいとしてて、ずっと聴いていたいと思えるような番組だっただろうな。聴いてみたかったな。

日野さん。

あなたは一体どんな気持ちで、私のサポートをしてくれていたの?



「胸糞悪かっただろうね」

「ちょ……杏子、言い方」

「だって、そうじゃない?入社してたった2年目の小娘が、どんどんキャリアアップしていくんだもん。私だって、見ててムカついたし」

「う……」

「しかも、あの鬼の時枝ディレクターが、唯一目に掛けていたわけだし。見るからにえこひいきしてたもんねー。そりゃ潰したくもなるわ」

「なんか、ごめん」

「だから、そういうのがむかつくんだって」

「……」

「ま、私はそんなことで子供じみた嫌がらせなんかしないけどね」



ニヤリと笑った杏子は、私の頬を突いた。

例の嫌がらせの件で、もしかしたら、犯人は杏子かも。

そんなことをチラリとでも思ってしまった私に、彼女はきっと気が付いてる。

気が付いていて、それは口に出さずに、こうやってチクチク嫌味を言ってくるんだ。

意地悪のようで、私を気遣ってくれている。

杏子らしい励まし方だと思う。



「よく言うよ、ちゃっかり日曜日の番組を担当しているくせに」

「”棚ぼた”ってやつよね」

「あー、何度聞いても悔しい!コネにくせに」

「それ、あいが言う?コネも実力のうちでしょ」




< 81 / 109 >

この作品をシェア

pagetop