深夜1時のラブレター
今までりゅうじさんが運転する車の助手席に乗ったのは、片手で足りるくらい。そのどれもが仕事で、遠くても30分ほど。
それが今回はプライベートで、しかも車は高速道路の入り口を突破し、ビルやマンションばかりが並ぶ景色から、山一色に変わり始める。
一体、どこに連れて行こうとしているの……?
渋滞している上り(のぼり)とは逆の下り(くだり)だから、それほど混んでいるわけじゃないけど、そこそこの交通量。
その中を縫うようにして走り抜けた彼は、やがて高速を降りた。
「ここから先は、下道の方が空いているんだ」
「詳しいんですね、交通情報を聞いてきたんですか?」
「いや、地元なんだよ」
「へぇ、地元……、えっ!」
ちょっと待って、地元ってどういうこと!?
焦る私を他所に、りゅうじさんは涼しい顔をしてハンドルを切る。
彼の言う通り高速道路を降りてからの道の方が空いていて、沿道に積もる白い雪が細く長く続いていた。
静かな街だった。
信号が極端に少なくて、お正月のせいか歩いてる人も少なくて。
白と黒の世界が、綺麗でもあり、寂しくも感じる。
水墨画のような世界は、まるで今の私の心のようだ。
ここに1つでも色があれば――――、
あの子みたいに明るく弾けた色があれば、きっと心は晴れるのに。
そんなことをぼんやり考えているうちに、車はどこかに停まっていた。