深夜1時のラブレター
前に1度だけ会ったことがあるけど、もう覚えていないらしい。
自己紹介をしてくれた沙良ちゃんは、子供らしい可愛い笑顔で、おねぇちゃん遊ぼう!とおもちゃ箱を持って来た。
お絵かき、着せ替え人形、秘密戦士ルルーちゃん。
女の子の遊びはいくつになっても面白いもので、ついつい夢中になってしまう。
そうしてるうちに日が暮れて、りゅうじさんが散歩に行こうと誘ってくれた。
「おねぇちゃーん!先行ってるね」
葉がすっかり落ちてしまい裸になった木が並ぶ道を、真っ直ぐ進むと公園があるらしい。
保育園が冬休みに入ってからずっとこっちに来ていた沙良ちゃんは、もうこの辺りの地理に詳しくなっているようで、楽しそうな笑い声をあげて走って行った。
「随分と懐いていたな、子供の相手は得意か?」
「さぁ……?精神年齢が近いからじゃないでしょうか」
「褒めてるんだ、たまには素直に喜べよ」
良く言うよ、半分騙すみたいにして連れて来たくせに。
というか、今までこういうことを全くしてこなかったのに、いきなり実家に連れて来て、子供を含めた家族に紹介するなんて、突飛過ぎるでしょ?
そんな不満が、粉雪とともにパラパラ。
真っ直ぐ並んだ2足の足跡と、波打った小さな足跡が雪の絨毯の上に残っていく。
「結婚しないか?」
りゅうじさんがそんなことを言ったのは、公園に着いた時だった。