深夜1時のラブレター



「ありがとう、おねぇちゃん」

「どうしたしまして」

「今日はハンカチもってたんだね!」

「え?」



反射的に聞き返した私に、沙良ちゃんはニコっと笑ってブランコに腰を掛ける。

キキ、キキ、と金属の擦れる音がして、彼女のツインテールが大きく揺れた。



「沙良ちゃん、”今日は”って」

「前もおねぇちゃんとこうえんで会ったよね!おぼえてるよ」

「そう……そうだったんだ」

「さらがないちゃって、おねぇちゃんがハンカチハンカチって言ったけど、なくて。そしたらおにぃちゃんがなみだをふいてくれたの」

「うん」

「おにぃちゃん、今日はこないの?げんき?」



いつしか、人は忘れていく――――。

どんなに悲しくても、寂しくても、居なくなってしまえば、いつか忘れてしまい、居ないことに慣れてしまう。

そうだよね、そうじゃなかったの?

ねぇ、ほまれ。

沙良ちゃんは、ほまれのことを覚えているよ。

私だって忘れてないよ。

この先、きっとずっと、忘れないよ。



「おねぇちゃん?どうしたの?なかないで」



水墨画のように色が無くなった私の世界で。

唯一足りないのは、ほまれだった。ほまれだけだった。

溢れだす涙を止めることが出来なかった私は、この後しばらく、小さな女の子の胸を借りて泣いた。




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