猫と太陽。

「はぁ?高見、お前もう帰んの!?」

久しぶりに飲みに行った友人は、普段よりずっと早く帰ろうとした僕に非難というより驚きがやや混じった声を上げた。

それも無理はないと思う。
今はまだ夜の9時で、僕らが普段お開きにする時間よりずいぶんと早い。

「悪い、今日は早めに帰りたいんだ」

「いや、別にいいけどさ。何か用事?」

「あー…まぁ……うん」

聞かれて何と返したらいいか分からず、曖昧な返事になる。
本当のことを言うわけにもいかず、とっさに機転の利いた嘘もつけない。

一応小説家という言葉を操る職業を生業にしている癖に、実際に言葉を口に出すという行為はあまり得意とは言えない。
普段から会話でコミュニケーションをとるという行為が人より著しく少ないのが原因の一つなのだろう。

< 2 / 4 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop