猫と太陽。
「そっか。じゃーまた暇なとき飲み行こうぜ」
濁した返事で僕が言いたくないということを察してくれたのか、僕の友人ー佐藤はそのことを深く追求しないでいてくれた。
「あぁ。悪いな。また連絡する」
こういう適度な距離感というか、空気を読んでくれるあたりが僕と佐藤の仲が続いている所以なのかもしれない。
目つきが悪く、積極的でもない、高校時代1人黙々と本を読んでいるようなタイプだった僕にとって、佐藤は唯一と言っていい友人である。
佐藤は飲み足りないからとまだ1人で店に残るらしく、僕は金だけ置いて居酒屋を出た。
外は春の夜風がやさしく吹いていて、心地よい。
なるべく早く切り上げたつもりだが、すっかり暗くなってしまった辺りを見て遅くなってしまったかもしれないと思う。
僕は足早に帰路についた。
数年前から一人暮らししていた僕の1LDKのマンションで、待っているであろう“早く帰らなければならない原因”のために。