白鷺の剣~ハクロノツルギ~
でも、分からない。

それはいつ?!どこで?!

ああ、こんな事なら幕末大好き女子の堀北さんの話、真剣に聞いてりゃ良かった。

分かっているのは、岡田以蔵が白鷺の日本刀『白鷺一翔』で、人を斬ろうとしている事だ。

そして今彼は恐らくこの大阪にいる。

大阪のどこに?

焦りを感じてジワリと背中に汗が伝う。

「柚菜ちゃん、仕込み手伝ってもらえるかい?」

「はあい!」

私は一階から呼ぶ女将さんに返事を返しながら、手の汗を拭いた。

◇◇◇◇◇◇◇◇

その日の夜。

ボソボソと、一階の端の座敷から話し声がする。

店内は賑わっていて客も多かったけど、私は何故かその隅の座敷が気になって仕方なかった。

こんなにざわついた店内なのに、その一角から聞こえる声はボソボソとしたぐぐもった小声で、やたらと回りを気にしているようであった。

「女将、大事な話をするから障子は絶対閉めておいてくれ」

来店してきた際、二人の浪人風の男性は開口一番にそう言うと、頷いた女将に酒を注文して個室の中へと入ってしまった。

鋭い眼差しに、緊張ぎみの頬。

ただ料理を食べに来ただけではない雰囲気。

……私のシックスセンスが何かを捉えた。

捉えたというか、感じた。

……彼らは似ているのだ、岡田以蔵に。
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