白鷺の剣~ハクロノツルギ~
早く、会いたい。

部屋に入ると真っ先に脇差のしまわれた棚を開けた。

「白鷺……」

思わず口を突いて出た言葉は『白鷺』。

その時である。

「随分な扱いだな」

心臓を掴み上げられたような感覚にビクッとして、私は我に返った。

深く良く響く声は身体の中にじんわりと染みていくようで、驚いた割にさほど恐怖は感じない。

「……誰?」

「誰だと思う?」

真後ろで再び声がして、私は振り返った。

想像よりも高い位置にある顔を思わず見上げる。

なんて、素敵な人なんだろうと思った。

凛々しい眉の下の、意思の強そうな黒い瞳。

端正な顔立ち。

和装の胸元は僅かに着崩れていて、厚い胸板がチラリと見えている。

本能的に神様だと思った。

何で怖くないんだろう。

神様だから?

チラリと横目でれいの箱を見ると、紫色の靄のようなものに包まれていた。

「あなたは……神様……」

「名は分かるか?」

私は思わずたじろいだが、必死で平静を装った。

……だって、なんだったっけ?とは言えない。

罰が当たると嫌だし。

「もちろん」
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